占い徒然草#007

それは幸せ?不幸せ? ― 占い鑑定の基準 ―

癌が偶然見つかった!あなたは不幸でしかありえない?

私が受ける占いの相談の内容は千差万別ですが、どんな相談であれ、鑑定依頼者さんの心にあるのは広くとらえれば「どうすれば幸せになれるか」といったことにつきます。
私が対面のかたちで鑑定するときには、しばしば依頼者さんにお伝えしていることがあります。
それは基準をどこに置くかで、同じ事象であっても幸・不幸の判断が大きく異なってくるということです。
一例を挙げましょう。
少し前までは癌という病気は生存確率が低く、不治の病と見られていましたから、癌が見つかった時点でとてつもなく‶不幸せ″と受け取られるのが一般的でした。
もちろん今日でも、「癌がみつかった」と言われたら多くの人は心穏やかにはいられませんよね。
ここで先ほどの基準の話に戻ります。
検査で癌が見つかった人がいたとして、その人が「癌にかかったかどうか」を基準に評価するのであれば、検査の結果は「不幸せ」でしかないでしょう。
ですが次のような場合だとどう思いますか?
癌の発見は話の流れでたまたま受けた血液検査によるもので、それが思わぬ形で今回の早期発見につながったのだとしたら…。
その人が「癌になっても治せるうちに見つけられるかどうか」を基準に判断するなら、今回の検査結果は「幸せ」であったことになります。いわゆる不幸中の幸いですね。
癌が見つかったという検査結果に対して、「癌になるかどうか」を基準にすれば不幸せ、「癌になっても早期発見できるかどうか」を基準すれば幸せ。
このように同じ事象に対しても、評価の基準をどこに置くかによって受け取り方は「幸せ」から「不幸せ」まで大きく揺れ動きます。

ものごとの基準を考える。

このように同じものごとでも見る方向によって全然違う意味になることはよくあります。
それは「2D」ではなく「3D」での見え方によく似ているのではないでしょうか。
洗濯バサミを例にしましょう。
2D、つまり縦と横(高さと幅)しかない平面に写真やイラストとして描かれた洗濯バサミは誰がどの角度から見ても変わりません。
ですが実際の洗濯バサミはもちろん、高さ・幅・奥行の3Dの形状、つまり立体物ですから、見る角度によって見え方が変わりますね。
正面から見てローマ字の「A」のように見える洗濯バサミも、角度を変えれば「I」のようだったり、「V」のようだったりと。
ものごとも立体物と同じで、見る角度を変える、つまりどこに基準を置くかによって見え方・受け取り方が大きく変わるということですね。
そして占いの鑑定結果にも同じことがいえるのです。

「当たる・当たらない」は「幸せ・不幸せ」?

占いの鑑定結果に関して、「当たる」「当たらない」だけを基準に評価される方がいます。
もちろんそれもひとつの重要な判断基準であることは間違いありませんが、私は「100%当たる占い師さん」は存在しないと考えています。
30年以上占いに関わってきて、たくさんの素晴らしい占い師さんにお逢いしました。
優れた技術をお持ちの方や人間的に素晴らしい方など、本当に尊敬できる占い師さんたちに勉強させていただきましたが、ただ「100%当たる」方とはお逢いしたことがありません。
理由はもちろん、占い師さんも人間だからです。
もし「100%当たる」方が存在するなら、その方は神様でしょう。
なにが言いたいのかというと、「当たる」「当たらない」だけに固執することは占い本来のメリットを見落としてしまうことになりかねない、ということなのです。
なんのために占いはあるのか。 それは、依頼者さんが「幸せな人生」を手に入れるためにこそあります。
占いを活用することでその人の幸せに少しでも近づけるようにすることが占いの存在意義です。
そう考えたとき、占いの鑑定で大事なことは「当たる」「当たらない」だけでしょうか?
少なくとも私は、占いの良し悪しの基準は「依頼者さんファーストかどうか」であるべきだと信じています。

たとえ遠回りと分かっていても…。

したがって、実はときに依頼者さんに回り道を薦めることもあるのです。
依頼者さんが最後には進むべき道を納得して進めるようにするために、いったん遠回りが必要と判断すれば、それを最善の選択肢として私はお薦めします。
例えば山に行きたいと思っている頑固な依頼者さんがいるとしましょう。
私の占いでは、山よりも海に行った方が幸せの確率が高いという鑑定結果が出たとします。
もちろん、素直に鑑定を受け入れていただけそうな依頼者さんでしたら、最初から海へ行くべきことをお伝えしますよ。
ですが、山へ行きたいという思いが強すぎる依頼者さんにしぶしぶ海へ行かせるようなことで、私は占い師の務めを果たしたと言えるでしょうか?
私ならこのような場合、依頼者さんの性格を踏まえて、ご自身の行動と判断に納得してもらうために山にも海にも行くことをお薦めします。
いちど山に行っていただき、その後で海にも行ってもらって、どちらが良かったかをハッキリ理解していただいたうえで依頼者さんご自身に最終的な道を決めていただくのです。
いっけん遠回りで無駄なことに思われるかもしれません。
ですが同じ道でもみずから行動し、納得して選んだうえで進むのならば、結果はずっとよくなるでしょう。
そのような理由から、占い師は正解だけを伝えるべき存在ではないというのが私の考えです。
占い師の務めは当たりそうな予言をすることにではなく、依頼者さんを幸せに導くことにこそあるのですから。
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